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醤油ソムリエールの肩書で全国の醤油蔵を取材し、紹介活動をしている黒島慶子さんに、醤油についてお話を伺いました。

2018年6月15日(金)


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3.蔵元の悩み

阪本蔵元さんから聞く悩みってどんなことが多いですか?

黒島いろいろと悩んでらっしゃるみたいです。
よくお聞きするのは、大豆の価格が上がってしまい、醤油の値段をあげないといけないのだが、他の蔵元さんはどうしてる?みたいなご相談ですね。

阪本大豆の値段が上がると、とても厳しいでしょうね。

黒島輸入大豆をお使いの蔵元さんもいらっしゃいます。
国産というだけで価格がぐっと上がってしまうから。

阪本大豆の価格設定について、その年の豊作や不作の状況で輸入大豆の価格が決定し、その価格をベースに、国産大豆は常にそれより高く引き上げた価格に設定されているということを伺ったことがあります。
だから国産を使うと醤油の値段も高くなるんですね。

黒島例えば混合醤油を作るのがメインでも、ちょっとだけ国産大豆の醤油を造って看板にしているところも多いです。敢えてそうしているようです。
看板と主力の製品が違うと言うか。

阪本ご苦労されているんですね。

黒島ほとんどの製品が混合醤油だが、お客さまからリクエストにお応えできるように国産大豆の醤油を少し造る、または他から買って揃えておく、と言うのはよく見ますね。
ほかの蔵元さんから醤油を買う傾向もあると思います。これも少なくないですね。

阪本他から醤油を仕入て販売される蔵元さんがあるということは、知らなかったですね。
その際、表示に関しては何かあるのですか?

黒島特にないようです。
これは、高度成長期に自社醸造をやめて共同事業化させる動きが国策としてあり、そういった時代要請に従った蔵元さんが多くいて、自分たちでつくる醤油も平均化されたものになってしまったことが背景にあると聞きました。

阪本高度成長期は機械化が良いと思われていた時代ですしね。

黒島戦後、食糧難で醤油が足りなくなって機械化が進む時期に、昔ながらの手間暇かけて造る醤油に対して否定的な風潮があったと。
しかも機械化によって品質は一定になるし、現場も清潔というイメージがあるから、なおさら。

阪本機械化することにもお金が必要ですし、蔵元さんがそれぞれに対応できる話でもなかったと。

黒島そうですね。
機械化の流れの中で、相手にされないくらいに小さい蔵元さんの一部が、その状態で今まで生き残った。そこが最近、特徴的な醤油造りをすると取り上げられるようになった流れはあります。

阪本一方で、最近は木桶仕込みの醤油に関心が集まっていますよね。

黒島最近になってですね、木桶がちょっと流行りだしたのは。
ほとんどの蔵元さんは、新しい設備を購入することが難しくて、先代が使っていた道具をそのまま使い続けていたんです。それを恥ずかしいと思っている蔵元さんは多かったですね。
私が取材に伺った時も「桶の写真は撮影しないでくれ」と言われたり。

阪本そうなんですか。機械化が良いと思われていたのでしょうね。

黒島私がそれこそ200回は伺った木桶仕込みで有名な地元の蔵元さんがあるのですが、そこがメディアに出るようになってから、木桶醤油への見方がガラッと変わった感じはしますね。
一方で、効率化を図る上では機械を入れ替えることも大事なので、想いが強い蔵元さんほど必要に応じて機械を入れる傾向もあります。

阪本造り方がお値段に影響することもあるのですか?

黒島そうですね。
大豆の値段がどんどん上がっている一方で、醤油の値段は下がるばかり。
普通に造るだけでは、どんどん安さへの圧力がかかってしまいます。

阪本安さで勝負するか、高くなっても差別化を打ち出すか。

黒島ステンレスタンクの長所は品質が均一にできる。
欠点としては、誰でも同じ味ができるので差別化になりにくい。
だし醤油などの加工醤油では、付加価値をつけることが製造の流れに含まれているので、やりやすいのだとは思います。
木桶はPRとして使えるようなんですね。

阪本そうなんですね。

黒島木桶への関心が高まって以来、木桶に代々付着している菌=うちの味、みたいな言い方ができるようになっています。
ただ、木桶の醤油は手造りそのものであり、美味しいものと まずいものの差も激しいです。
差別化しやすいのでしょうが、残念ながら美味しくない醤油も多いんです。

阪本後継者のお話も挙げられていますね。

黒島後継者の問題は大きそうですね。
実際、いい醤油を造れば利益が出るというわけではないようですから、後継者としても、よほどの思い入れがないと続けることが大変だと思います。

阪本醤油の造り手さんが、どんどん減っていってしまうような気がします。

黒島大手へと集中する流れは、これからもあると思います。
今は人口減少の影響もあって、緩やかに市場規模が小さくなっています。
これも、自分が醤油ソムリエールの活動をする理由だと思っているのですが、大手も含めて良い業界淘汰のされ方になっていかないものだろうかと。

その中で、想いやこだわりを持ち続ける蔵元さんが少しでも残っていけるように、魅力ある醤油をもっと伝えていきたいと考えています。

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